『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #22「サムライ」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #22「サムライ」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第22回作品『サムライ』1967年仏伊
美観に貫かれた語り口、削ぎ落とされた抑制美、
極端に少ないセリフ、ジタンの煙と美しい音楽。
お酒といえば冒頭のワイン、ヴーヴークリコ、
そして物語の鍵となるクラブでのウィスキー。
ホワイト&マッケイあたりか、だが銘柄不明、
冷酷な殺し屋のアジトにあるのは大量のエビアン。
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『純米原酒 侍』(日本酒)
サムライの孤独ほど深いものはない。
もしかしたら……
密林の虎だけがこの孤独を知るだろう……
という武士道の引用から始まる冒頭シーン、
ただこれはメルヴィルの創作のようで。
しかしタイトルである「Le Samouraï」
日本の侍や武士道の精神性、美意識を
殺し屋のそれと重ねて合わせて、
終始作品の中で静かに貫かれています。
そこでサムライの名を冠した日本酒、
北の誉酒造『純米原酒 侍』をご紹介。
北海道産の酒造好適米「吟風」を100%使用、
18%の高めの度数は日本酒のロックやソーダ割り、
ライム果汁を入れたサムライロックなどに適した
日本酒としてリリースされました。
そしてブルーのボトルはサッカー日本代表や、
外国人旅行者、海外のマーケットも意識した
クールなデザインとなっています。
そう、ドロンは男性用香水「SAMOURAI」を
プロデュース、その調香は日本でも人気です。
やはりそのボトルも済んだ青色で。。
『サムライ』(カクテル)
昨年5月に俳優引退を表明したアランドロン。
先日NHKBSで「アランドロン/ラストメッセージ」
とマスコミ嫌いの単独インタビュー番組を放送し、
旧作の再評価や再販も進んでいる模様。
最後の作品と共に今後の展開が楽しみです。
さて、お酒の話に戻りますとこれもその名を
冠したカクテル「サムライ」を一つ。
日本酒ベースでライムとレモンをシェイクした、
ギムレットやダイキリのようにキリッとした
シンプルな口当たりのカクテルです。
日本酒カクテルは80年代のカクテルブームの頃、
海外等で賞をとった上田和男氏、花崎一夫氏など、
自国の日本酒をベースにしたカクテルを世界へと
業界を交えて幾つも提案されました。
「清流」「ファンタスティック・レマン」「春の雪」
などありますが、その後の海外の日本酒自体の
ブームで逆に影を潜める形となり、
スタンダード化までは至っていないのが現状です。
本作に於いてはごく少ないセリフのその殆どが
「ウィ」か「ノン」町を歩くだけのシーン、
脚本もストーリーもありきたりと言えばそうだが、
何かそのシンプルさゆえの深みに惹かれてしまう。
そんなムードにはとてもマッチするお酒。
先のインタビューの中で自分が死んだ時、
フランスの新聞はどのように書くか、
記者たちに聞いたと言っていた。
『サムライが死んだ』
彼らはそのように書くと答えドロン自身も、
そのように書いてもらえるだろうと。。