映画とお酒

『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #28「ベティ・ブルー愛と激情の日々」

『シネマに酔狂』

バーテンダーが語る映画とお酒 #28「ベティ・ブルー愛と激情の日々」

〜映画を彩る名脇役たち〜

Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。

第28回作品『ベティ・ブルー愛と激情の日々』1986年仏

原題は「37.2 le matin」朝、摂氏37.2度とは、
女性が最も妊娠しやすい体温のことを言うらしい。

作品にはこの物語の激情や歓喜、狂気に伴い様々な
場面で様々なお酒が怒涛のように登場しています。
ハイネケン、キャンティー、モエ・シャンドン、
ペルノー、マルティニロッソ、クローネンブルグ、
シメイ、333、ビボログウォッカ、スクリューD、
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。

『テキーラ・ラピド』(カクテル)

冒頭のあのバンガローから印象的なシーンで何度か
作中に登場するお酒『テキーラ・ラピド』
これはこの作品オリジナルの呼び名であり、
一般的にはショット・ガン、強いシューターカクテル。
至ってシンプルでテキーラとシュエップス半々で作る。

この酒をやり合いゾルグが書いた本についてエディと
ベロベロで笑い転げながら話すシーンが良い、
オリーブのセールスマンをこの酒でやり込める場面も。
序盤の夜の海辺のテラスでゾルグがベティに、
「一気に飲め、一気にだ」と飲ませていたのも
これ『テキーラ・ラピド』
作中にゾルグ自ら作り方を解説するシーンがある。

「もっとうまい酒を“テキーラ・ラピド”だ」
「なんだい?」
「“テキーラ・ラピド”」
「布巾とグラスを用意する」
布巾にグラスをのせて
「テキーラとシュエップスを」
そしてグラスをふきんで包み込み、テーブルにガツンと
叩きつける。はい出来上がりだ。

テキーラの銘柄は作品前半はクエルボ・ホワイト、
後半はマリアッチ・ブランコと二種類が登場している。
いつもお祝いだ、お祝いだとシャンパンやワインと共に
こいつをやっつけるシーンが皆んな何とも最高に楽しそう。
それはこの作品中で救われるシーンであり幸せが溢れる。
逆に重く深刻な事態とガブリエル・ヤレドの美しい音楽、
その陽と陰、明と暗のコントラストが物語に深みを与えている。

テキーラ・ラピドは英語の「rapid」からだろう。
意味は、早急の、とんとん拍子の、短時間の……..
一気に酔ってしまえる酒という事だろうが、

男女の機微、彼等の人生や物語、そうベティそのものが、
「rapid」であろう事もこの名は暗示しているようで。。。

『パスティス・51』(リキュール)

「あなたは作家よ 小説を書いたじゃない
競馬でもして遊んだら? 配管工の仕事なんかやめて」

とベティに促され仕方なく「競馬新聞を買ってくる」
と外に出たゾルグが立ち寄った近所のパブにて、

店員「注文は?」
ゾルグ「テキーラ」
店員「ありません」
ゾルグ「・・・・・・」
店員「置いてないよ」
ゾルグ「じゃあ パスティス」
店員「51?」
ゾルグ「トリプルで」
そして店員はグラスと共に水差しを差し出す。
水差しには紺色に白抜き文字でPASTIS 51のロゴが
入っていて透明な液体が水で白く濁っていく。

フランス語で「サンカンテアン」
1915年にアブサンの製造・流通・販売が禁止されたため、
ニガヨモギを加えて作る香草系リキュールアブサンの代替品と
して生み出された。加水すると白濁するのが特徴。
名はSe pastiser(似せる、まがい物の意)
一般的に氷や水で割るか、シロップを加える、カクテルに
用いるなどして飲む。

「51」は1940年のナチスのフランス侵攻により、16度以上の
酒類の製造販売が禁止され、解禁されたのが「1951年」
である事による。
(酒ばっかり飲んでるからロクな抵抗も
できなかったんじゃないのか、という時の政権によるもの)

パリのカフェテラスなどで飲んでる風景をよ良く目にする、
私もフランス滞在中はこの酒でそんな気分を味わった。

ワインよりむしろパスティスの方がそんな当時の記憶を
鮮明に呼び起こしてくれる…..

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