『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #35「ニュー・シネマ・パラダイス」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #35「ニュー・シネマ・パラダイス」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第35回作品『ニュー・シネマ・パラダイス』1988年伊仏
1988年公開のイタリア映画、監督はジュゼッペ・トルナトーレ。
中年を迎えた映画監督が、映画に魅せられた少年時代の
出来事と青年時代の恋愛を回想する物語。
シシリアが舞台の作品でそこかしこにワイン、映画館で
キャンティを振りかざす男(キャンティはまた別の機会に)
新年を祝う泡、初恋の女性に瓜二つの少女に驚き、手元から
滑り落ちるショットグラスにはウィスキーのダブルが。。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します
『パラダイス』(カクテル)
その名の通り作品タイトルからカクテル「パラダイス」
ですが、もう一歩踏み込んだ意味がありまして。
ジンベースでアプリコット、オレンジをシェイクした、
パラダイス(楽園)と呼ばれるにふさわしいやや甘口の
カクテル。 アプリコットとオレンジジュースの相性が良く、
香りも味も新しいフルーツのように新鮮。
優しいイエローの色合いも映画の雰囲気にマッチします。
今回はジン、アプリコットにフランスのエギュベルを使い、
イタリアのアマレットを1dushして伊仏合作といった趣き
にアレンジしました。かなりドライ目で。
1930年にはサヴォイ・カクテルブックで紹介があるので、
1920年代にはすでに登場したと思われ、かの黄金時代の
パーティーを楽園は彩っていた事でしょう。
イタリアはカトリック国。この作品に限らず、多くの
イタリア映画、アメリカのイタリア移民のものなども、
その下地やエッセンスは切っても切り離せない。
エデンの園(楽園)でアダムとイブが知恵の実を食べて
追放されるところから、トトはパラダイス(シシリア)
から出て行かなければ、というのがクロスオーバー
してきます。
更に、知恵の実というのもしばしば林檎とされますが、
エデンの園はアルメニア辺りとされていて、
当時アプリコット(杏子)は「アルメニアの林檎」と
呼ばれていた事から、私の中でイメージが何重か繋がり、
アプリコットを使ったカクテル「パラダイス」へと
辿り着きました。
1932年の恋愛映画『限りなき旅』では香港の有名な酒場で
偶然パラダイスをこぼすところから始まる男女の物語。
これも楽園追放的な幸薄き恋仲の話。
最後に『分かった、明日5時に楽園(パラディーソ)で』
みたいなセリフがまた何とも美しいもので。。。
『ドゥーカ・ディ・サルパルータ・コルヴォ』(ワイン)
主人公トトが久しぶりにシシリアに帰ってきた際に、
家族達がパスタと共に食卓を囲んで待っている。
その時に並んでいたワインがこの「コルヴォ」です。
30年ぶりに帰った故郷で懐かしい家族と味わう食事と
ワイン、何とも言えずいいシーンで使われています。
ネレッロ・マスカレーぜ種などシチリアの土着品種だけ
を使い手済みで収穫後、マロラクティック発酵させ、
オーク樽で熟成させています。
深いルビー色、持続性と奥行きのある香りとバランスの
取れた味わいが特徴。
コルヴォはイタリア内でも高い知名度で、コストパフォー
マンスの優れたデイリーワインとして愛されています。
コルヴォのはグランブルーにも登場しています。
久しぶりに再会したジャック・マイヨールとエンゾ。
シチリア島はタオルミナ岬の高級リゾートホテル
カポタオルミナ・ホテルのテラスレストランで、
「ママ以外のパスタを食べたら殺される」と
エンゾ(ジャン・レノ)は海の幸のパスタを食べながら
コルヴォ・ビアンコを飲んでいます。
この時はワインを二本空にしていますね。。
他にも「コルヴォ」は映画や本などにしばしば登場して
いるようです。
値段もお手頃で手に入りやすいので、このワインを
飲みながら映画の世界に浸ってみてはいかが?