『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #38「フィッシャーキング」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #38「フィッシャーキング」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第38回作品『フィッシャー・キング』1991年米国
1991年の作品、鬼才テリー・ギリアム監督。
自らの発言が発端で銃乱射事件が起きた事から
すっかり落ちぶれた元人気DJとホームレスの男が、
互いの人生を見つめ変えてゆく都会のファンタジー。
作中では紹介のお酒が明確に登場、その他には、
ビデオ屋でのワイン(キャンティーもありアンが
イタリア系であるを表す)中華料理屋では紹興酒か。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『ジャック・ダニエル』(ウィスキー)
この映画の主人公、人気DJのジャック・ルーカス。
作品の冒頭からレイ・チャールズ の「旅立てジャック
(Hit the road,Jack)」と共に颯爽と登場する、
ニューヨークの高級ペントハウスにはこのお酒、
ジャック・ダニエルが置かれている。
その後、すっかりと落ちぶれてビデオ屋の店主である
彼女の家に転がり込み、酒浸りの自堕落な生活を
送る事になるがそこでもテーブルにはジャック。
主人公の名前であるジャックに引っ掛けていて、
ラベルがよく分かる映し方なので意図的なもの。
ここでは良い時のジャック、悪い時のジャックと
お酒の扱われ方の違いで心情や状態が分かるもの。
ジャック・ダニエルはシャイニングの時に登場、
アル中の主人公が幻影のバーでつい手を出してしまう…
ジャック・ニコルソンの怪演が印象的なシーン、
こちらも主人公、役者共に名前はジャック。
バーボンの製造要件を満たしていますが「チャコール
・メローイング」という独自製法が加わり、
テネシー・ウィスキーと呼ばれ愛飲されています。
アメリカではメジャーな流通品とあって、セント・
オブ・ウーマン、ストレンジャー・ザン・パラダイス、
007ゴールデンアイなど様々な映画に登場しています。
多くのミュージシャンに愛された酒としても有名で、
フランク・シナトラ初め、ローリングストーンズ、
スラッシュ、レミー・キルミスターのコーラ割り、
ジミー・ペイジ、マイケル・アンソニー……
そうそう、次元大介も。
『クエルボ・ゴールド』(テキーラ)
ヒロインのリディアをビデオ屋へ何とか誘い出し、
更にジャックの過度な計らいでアンがリディアの
ネイルを施すハメに…
互いにクセが強く面識もない女同士が向き合い、
事態に巻き込まれたアンが半ば仕方なしに施術を
始めるがこれまで恋愛、仕事など女子トークも
何だかチグハグな会話が進んでいく。
そこで「あんた、飲めんの?」
とばかりにテキーラを持ち出し飲み始める。
ここで登場するのがクエルボ・ゴールド。
お酒の勢いもあってか徐々に意気投合し、元々は
パリーとの食事に連れ出す為のネイルだったが、
迎えが来た頃はすっかり酔って床を転げ回っている。
極度に偏屈だが純粋なリディアと、包容力ある
熱いラテン女アンが互いを認め共感する良いシーン。
こういった場面でテキーラは正に打ってつけだ。
また、酒に慣れていないのかショットグラスの
テキーラをストローでチビチビ飲むリディアが愛らしい。
その後は皆んなが良い雰囲気で中華料理店へ…
クエルボはテキーラの代表的な銘柄で、1880年、
初めてのガラス瓶入りテキーラを開発し発売。
またマルガリータやテキーラ・サンライズなど
カクテルとして世界中で飲まれています。
以前ベティ・ブルーの際にテキーラ・ラピドの
使用酒として登場、ガルシアの首などの映画に、
またアメリカ映画のバーのバックカウンターには
高い確率でクエルボやサウザなどのテキーラが
並んで映っています。
人との距離を一気に縮めるにはテキーラかな。。