『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #41「サスペリア」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #41「サスペリア」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第41回作品『サスペリア』1977年伊
ダリオ・アルジェント監督1977年制作のイタリアホラー映画。
「魔女3部作」の1作目、ドイツのバレエ名門校に入学した
若い娘を襲う恐怖を描き、世界的な大ヒット。
作品中お酒は、主人公のスージーが何やら秘密が盛られた
ワインを飲む(飲ませれる)シーンくらい。
そのワインの実に気持ち悪い赤い色と言ったら……
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『アイリス』(カクテル)
バレリーナ志望のスージーは、ドイツにあるバレエの名門校に
入学する為に、ニューヨークからやって来た。
空港でようやく拾ったタクシーに乗ってスージーは学校に向かう。
激しい雨の中、到着したバレエ学院は気色の悪い赤い館。
そしてその建物の玄関では、若い生徒であるパットが
何者かに追われているかのように怯え、何かを叫んでいる。
「秘密のドア、アイリス、青いの……。」
映画の冒頭から何とも嫌な感じ満載のシーケンスが続き、
耳にはゴブリンの斬新な音楽が一気に炸裂する。
謎の言葉を残した若い生徒のパットはその後、
イタリアンホラーらしい方法論で惨殺されて。。
後半では、魔女達の儀式が行われている怪しい部屋への
隠し扉に行き着くの重要な鍵となり…
そこでカクテルの「アイリス」をご紹介。
ウォッカ とグレープフルーツにマラスキーノの香り付け、
ブルーキュラソー で映画と同様澄んだ青い色に。
劇中の「アイリス、青いの……」に符合します。
アヤメやカキツバタ、菖蒲など花の名前でありますが、
(作品では様々な色のアイリスが描かれた壁があり
その中で青い花を回すと秘密の扉が開く仕組み)
ギリシャ神話では天と地を結んだ虹の女神で、
アイリスの花の名もそれに由来します。
天と地の間を行き交う伝令使、メッセンジャーな要素、
2018年のリメイク版ではそんな雰囲気があります。
あのバレエ学校の内幕も更に深く描かれていますので、
オリジナルを観た方はそちらも是非。
『ヘックスフォン・ダーゼンシュタイン・シュペートブルグンダー ロートヴァイン」(ワイン)
この作品はドイツが舞台(フライブルグ)という要素と、
主人公スージーの気をおかしくさせる謎の赤ワイン。。
イタリアの赤ワインであれば簡単だったのですが、ここはドイツ。
(ドイツといえばリースリング主体の白ワインが中心)
何とかドイツ産の赤ワインを探してみたい、と奔走した結果、
ありました、赤、そして映画と符合する怪しい魔女のラベルが。。。
バーデン地方は温暖で、様々な土壌からの赤ワインがありその一つ、
「ヘックスフォン・ダーゼンシュタイン・シュペートブルグンダー ロートヴァイン」
シュペートブルグンダーは品種名で、何とドイツでピノ・ノワール。
そのピノの心地よい香りに繊細な渋み。
しっかりとした果実味もあり、飲み飽きない上品な味わいが楽しめます。
このワインの産地ドイツのバーデンは、17世紀前後魔女狩りが盛んであった為、
魔女伝説が多いそうです。ここからは昔話。
昔々、あるお姫様が身分の違う村人と禁断の恋に落ちました。
2人は駆け落ちをしてお姫様はお城を追放されてしまいました。
しかし2人は破局してしまいお姫様は孤独の身に。
それでも忘れることのできないお姫様は願いをかなえるため、
「魔女」になったのです。
でもこの「魔女」は「悪い魔女」ではありません。
その魔力で人々の恋を成就させる「良い魔女」となったのです。
という話から「恋愛成就のワイン」と紹介されることが多いですが、
これはドイツのワインサイトなどでも根拠のないセールス寓話。
伝わるところに拠ると、
城を追われ男にも裏切られ洞窟で過ごし、周囲と「いさかい」も起こして、
醜く年老いた彼女は 「魔女」と呼ばれるようになります。
それでも失意の中ぶどうを植え、出来たワインがとっても美味しいという
伝説を残します。やがて「魔女」と呼ばれようと嫌われようと
美味しいワインを作ったこの出来事は、 「ダーゼンシュタインの魔法」
として知られるようになったという魔女伝説。
魔女、そして血を象徴する赤ワイン、サスペリアに良くマッチします。
そして、ホラー映画を観る時は赤ワインが最も良いのかも。。。