『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #2「ニキータ」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #2
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムを始めました。
第二回『ニキータ』1990年仏
『テタンジェ・レゼルヴ』(シャンパン)
シャンパーニュ代表メゾンの一つ、テタンジェ。
シャンパーニュの説明は一先ず、ここは映画の話を。
映画『ニキータ』ではこのシャンパンが何度か登場し、
シーンや物語の粋なエッセンスとして効いています。
始めは、ニキータが晴れて訓練所を出ての殺し屋デビュー戦。
リヨン駅の豪華なレストランで教官のボブが『いつもの!』
と言って出てくるのが、
『テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン』
新たな門出には申し分無し。
これはテタンジェのプレステージ品で無骨なボトルの外見と違い、
中身は遥かに繊細、白の中の白、何とも意味深げかも。
そして、次はニキータがスーパーで知り合った男と同棲している
部屋に、教官のボブが叔父と称して訪ねてくるシーン。
ここは手土産程度に普段使いなレゼルブの方が自然。
和やかな三人の食事、しかしテタンジェという記号によって、
レストランからこのシーンまで繋がっているのです。
『コント・〜』は『007ロシアより愛を込めて』『Shall we dance?』
などにも登場、モエやヴーヴも勿論良いですが、
贈り物や気の利いた機会に、
是非『テタンジェ』というエスプリをチョイスしてはいかが?
『マルティニ・ロッソ』(イタリアンベルモット)
ヴェルモットとは「スティルワインに薬草、香草や果汁などを
加えて風味を付けた」アロマタイズド・ワインの一種です。
中でもマルティニは世界No1ブランド。
先日、上海のドルチェ&ガッバーナのアンテナBARでは、
(高いのときっとイケ好かない連中が集まるbyウッディーアレン)
マルティニバカルディーの大きなフラッグがドーンと掛かっていました。
イタリアンブランドなどと世界展開まっしぐら。
映画では、諜報相手のルームサービスに発信機などを細工するシーン。
様々なオーダーに対応すべく各国のお酒、オードブルなどが用意され、
その一つの『マルティニ・ロッソ』が注がれる。
後にヴェネチアでのミッションがあるので、ここはイタリア系か。
食前酒としては勿論、ベルモットは他のお酒との相性も抜群。
ドライベルモットはジンと『マティーニ』に、スイートベルモットは
ウィスキーと『マンハッタン』に、そう最高のパートナーでもあるのです。
『あぁ、君はなんてベルモットのような人なんだ』
古くは女性の薬膳酒、どうだろう?
バーやレストランで最初にビール、ジントニックも良いですが、
アペリティフとして当たり前にベルモットはいかが?
『マルティニ・ロッソ、ロックで少しソーダを足して欲しいの。
オレンジのスライスがあったら尚最高だわ』
昨日のキネマ倶楽部で、
『なんでシャンパンって高いんですか?』と伺いました。
製造上のコスト、出荷のロット数、国際企業の価格統制、需要と供給、
様々な理由が考えられますが、ここは一つ。
『人生の大事な節目やかけがえのない瞬間に必要とされるお酒が、
安く手に入るものであるはずがない』というのが最大の理由です。