猫の話

禅の意義

『禅の意義』という本を置いて、僕は微笑しながら猫達の方を見やった。

彼等はその時、ザラザラとした桃色の舌できめ細やかに毛を梳いている最中だった。晩秋の午後。

勉強の為にこの本を貸してあげてもいいけれど、君達はもう読み終えたようだね、と僕は言った。

すると彼等は顔を上げてまじまじと僕の顔を凝視した。

「馬鹿なことを言っては駄目よ」
彼等は喉を鳴らしながら言った。

「その本は私達が書いたんですもの」

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