『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #49「リトル・ダンサー」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #49『リトル・ダンサー』
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第49回作品『リトル・ダンサー』2000年英国
主人公がまだ少年という設定もあって、
作中では殆ど明確なお酒のシーンは無い。
舞台はイギリス北部の貧しい炭鉱街で、
不況とストライキからかパブなども登場しない。
バラエティーストアのレジ裏にウィスキー、
バレエの先生に家での食事のシーンは、
スティルワインかポートワインか。。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『ティーチャーズ』(ウィスキー)
早くからビリーのバレエの才能を見出していた、
かつてバレリーナであった中年のウィルキンソン夫人。
その名はお酒的にはジンジャーエールや炭酸となるが、、
密かにバレエ教室に通って彼女の指導を仰ぎながら、
ビリーのバレエは徐々に上達して行く。
しかしそれを知った父親はビリーに激怒し…
そんな問題を抱えて先生の自宅を訪れたところ。
話をするビリーの背景の棚にお酒が幾つか並ぶ、
その内の一本、ティーチャーズを紹介します。
最近では大泉洋のティーチャーズ先生のテレビCMなど、
かつてより一般的となったブレンデッド・ウィスキー。
150年以上の歴史があり、アードモアをキーモルトに
グレンドロナックなど多数のモルトをブレンド、
独特の爽やかなスモーキーフレーバーが特徴です。
これは、私のような者にしかわかりませんが、、
作品の時代は1984年頃の不況下イギリスですが、
今とはデザインが大きく異なる、その当時流通していた
古いティーチャーズの現物が置かれています。
お酒にも時代考証がなされていて関心した次第です。
(映画では稀に時代に合わない現行品が使われたり)
もう一つ、バレエの「先生」の家にティーチャーズ 。
そんな洒落もイギリスなら有り得そうな話ですが。
上記の大泉洋のティーチャーズ先生のCM然り、
しかしこのティーチャーズという銘柄名は、
このウィスキー創業者のウィリアム・ティーチャー氏、
その固有名詞由来ですのでスペルは同様なのですが、
先生という意味合いでは本来ありません。。
昔よりコスパの良いウィスキーとしてメディアなど、
各方面で紹介されています。
『ホワイト・スワン』(カクテル)
映画のクライマックス、14年経った後のビリー少年は、
劇場の大舞台の幕裏でその出番を待っている。
アダム・クーパー演じるプリンシパルのビリー、
大きく発達したしなやかな背中がクローズアップされ、
少年の才能に間違いが無かったことをそれが物語る。。
そのバレエ演目はそう「白鳥の湖」
という事でカクテル「ホワイト・スワン」をチョイス。
甘いアーモンドの香りのアマレットに牛乳を加えた、
まろやかな味わいのデザートカクテル。
杏仁豆腐のような風味、ご参加頂いた方にも好評でした。
シルクのような白色と甘味なその味わいは、
バレエの華やかな世界観にも良くマッチします。
もう一つ、選んだ理由それはミルク。
幼くして母親を亡くしたビリー、母親の手紙を大切にし、
いつも見守っているという言葉を胸にしています。
ある晩、無造作に瓶ごとミルクを飲もうとすると、
キッチンに母親の幻影が現れて、ビリーに、
「ちゃんとグラスに注いで飲みなさい」と
いつもそうであったように注意をします。
「ちゃんと元の場所に戻しなさい」とも。
冷蔵庫を閉めて振り返ると既に母の姿が消えていて、
物憂げな表情をするビリーが印象的なシーンです。
ミルクに纏わる母親との記憶。。
アマレットは家にあると重宝するリキュールで、
ウィスキーと合わせればゴッド・ファーザー、
ブランデーならフレンチ・コネクション、
アイスクリームにかけてもGood、是非。