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『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #55「素晴らしき哉、人生!」

『シネマに酔狂』

バーテンダーが語る映画とお酒 #55『素晴らしき哉、人生!

〜映画を彩る名脇役たち〜

Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。

第55回作品『素晴らしき哉、人生!1946年米国

フランク・キャプラ監督のヒューマニスティック・コメディ。
クリスマスの夜に奇跡を呼び起こす感動の名作。
作中では、結婚式や廃屋でのハネムーンのシャンパン、
失意の薬屋が飲むウィスキーのスキットル、
取り付け騒ぎを乗り切ってのウィスキーで乾杯、
行きつけのマティーニBARでの酒など。。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。

『オールド・フォレスター』(バーボン)

この写真にあるブラックラベルに『KING』とあるボトル。
これはジョージが存在しなかった異世界のバーシーンで登場します。

あまりに古く実物の入手はほぼ不可能でしょうが、
当時の広告などから『Pre-War」とあり、戦後間も無く
リリースされたウィスキーある事が分かります。

アメリカ国内であっても、戦時中は物資、労働力、燃料など
様々な制約があったので、『Pre-War』というフレーズが、
戦勝から新しい時代へを象徴する意味合いになっています。

『素晴らしき哉、人生!』の公開は戦後翌年の1946年です。
映画も酒も風俗も大衆意識も、次の時代を迎えていく、
正にブランニューなウィスキーが装置されている訳です。


ブレンデッドウィスキーとあるのでスコッチタイプでありましょう、
6年以上熟成のストレートウィスキー40%、グレーンウィスキー60%
他に『レッドラベル』もあった様ですが、銘柄として市場では、
あまり息が長くはなかった様です。

この『KING」ウィスキーはケンタッキー州ルイヴィル、
ブラウン=フォーマン社で作られており、この蒸留所の
フラッグシップの銘柄がストレートバーボンウィスキー、
今回ご紹介する『オールド・フォレスター』であります。

1870年に誕生した『オールド・フォレスター』
それまで樽詰めでの販売が一般的だったバーボンの中で、
初めて瓶詰め、封印を施して販売したと言われています。

名の由来は、当時このボトルを販売したジョージ・ガーヴィン・
ブラウンが、医薬品を販売していた時代のお得意様だった、
ウィリアム・フォレスター医師の名前から採ったと言われています。
販売当初は”Old Forrester”と名字通りのスペルでしたが、
彼が引退すると”Old Forester”とスペルを改めました。

1920年代の禁酒法時代、多くのバーボンが製造禁止になるも、
『オールド・フォレスター』は医薬目的の免許を受け、
製造を続けることに成功しました。
それにより、発売開始から現在まで継続して流通している、
最も古いバーボンと呼ばれています。

そして、発売時期は不明ですがアメリカ国内のみの流通で、
白いラベルとなった『KING』がリリースされています。
復刻では無く内容もブレンデッドからバーボンへと変更されて、
ブラウン=フォーマン社らしい原点回帰となっています。

『素晴らしき哉、人生!』登場の『KING』ウィスキー、
真の正当後継酒はこのお酒に終着となります。
アメリカ土産に、是非手に入れたい一本です。

また近年では、映画『キングスマン』とのコラボなど、
何かと映画と縁の深い『オールド・フォレスター』

クリスマスに『素晴らしき哉、人生!』を観ながらいかが?

『ホット・ワイン』(カクテル)

ジョージは、投身自殺をして保険金を手に入れようとする…

だが、飛ぶ直前に老人が川へ飛び込み、ジョージが老人を助けた。
助けた老人はクラレンスと名乗った、ジョージの守護天使だという。

そんな話を信じないジョージは絶望して「生まれなければよかった」と。
そこで天使のクラレンスは「それでは望み通りにしよう」と、
ジョージが生まれなかった場合のifの世の中を見せるのだが…

町はポッターズビルという名の物騒な町に変わっている。
様々な歴史や事柄、事象が全く違ってしまっている一つに、
「マティーニ」のはずが「ニックの店」に店名が変わっている。
あの温厚だったバーテンダーは気性が荒く酷く扱われる始末だった。

破れかぶれのジョージはダブルのウィスキーを頼んだ、
グラスに注がれるのは今回ご紹介した『KING WHISKEY』
案内役のクラレンスは飄々と落ち着いた態度で、
『ラム・パンチ、うーん夏ではなく冬だしなあ…』と悩んだ末、
ホット・ワイン』が良いとにこやかにオーダーする。
と言う事でクリスマスにマッチする『ホット・ワイン』をご紹介。

今回ご紹介するグリューワインは、ワインにスパイスやシロップを入れて
温めていただくドイツでは冬の風物詩の飲み物です。
日本ではホットワインと呼ばれていますが、これは和製英語。
英語では「mulld waine(マルドワイン)」
フランスでは「vin chaud(ヴァン・ショ)」と呼ばれています。

ドイツ語で「燃える・熱を帯びる」という意味を持つ「グリュー(Glüh)」
の名前の通り、冷えた体をポカポカ温めてくれるので寒い季節にピッタリ、
4週間続くクリスマスマーケットの主役と言える飲み物です。

その後、訳の分からぬ事ばかり言うジョージと店員は一悶着、
二人は雪の積もる外へと摘み出され『ホット・ワイン』は
劇中で実際には登場していません。。

その為、直後にクラレンスは天を見上げ大天使に向かって、
『私は飲んでいませんよ』と天使らしい可愛いセリフを囁きます。

遂にジョージは自身の素晴らしき人生に戻って来ます。

『ジョージよ、友はかけがいのないものだ。翼をありがとう』

というクラレンスからのメッセージが書かれた「トム・ソーヤの冒険」
が置かれていた。『天使は翼をもらうとベルが鳴るのよ』娘の言葉に、
親子で幸福をかみしめ、町民たちと蛍の光を合唱する。

と言う一説でこの物語は幕を閉じる。。

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