映画とお酒

『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #17「男はつらいよ」

『シネマに酔狂』

バーテンダーが語る映画とお酒 #17「男はつらいよ」

〜映画を彩る名脇役たち〜

Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。

第17回作品『男はつらいよ』
1969年-1995年日本

パ〜ン♬パラララララララ〜ン♬
毎回旅先で出会った『マドンナ』に惚れつつも、
失恋するか身を引くかして成就しない寅次郎。

瓶ビール、缶ビール、日本酒、ウィスキーなど、
恋路、家族の団欒、旅先の宿や店、移動の車中、
様々なシーンに合わせたお酒が登場しています。
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。

『サントリー角瓶』(ウィスキー)

シリーズ一作目『男はつらいよ』から登場。
恋焦がれる御前さんの娘(光本幸子)が結婚する
ことを知った寅さんが自室の押入れに閉じこもり、
悄然とこのウィスキーを喉に流し込む。。。

角瓶はおいちゃんから失敬してきたものだ。
おいちゃんは角瓶が好きと見え、妹の桜が博と
結婚すると言った時、嬉しさが込み上げてか、
ストレートでグラスを飲み干していた。

そこで寅さんの純日本的な雰囲気とウィスキー。
日本酒の一升瓶を抱えさせる方が良さそうだが、
失恋の酒にはウィスキーがよく似合う。
度数の弱い酒をダラダラとやっては気持ちは
いつまでもリセット出来ないだろう。
ウィスキーはガツンと心身の底に響き渡り、
未練を断ち切らせてくれる、そんなパワーがある。

全シリーズ中、寅さんは随分と酒を飲んでいます。
家族団欒で自慢話をする時は機嫌が良く、
とてもいい酒だが、一歩間違いヘソを曲げると、
クダを巻いたり、泥酔したり、からんだり。。

1937年(昭和12年)前身の寿屋から発売された、
日本の長寿ウィスキー。当初『角』の表記はなく、
角瓶という名称は後に正式につけられたもの。
写真の『角瓶』はそのファーストの復刻ボトル。
近年はハイボール人気で活躍、小雪あたりから。

江戸川の土手に腰をおろしキャップにウィスキーを
注いでキュッと一杯ひっかける。
真っ赤に染まる夕陽を浴びて、そんなのがいい。

『サッポロラガービール』(ビール)

『赤星』の愛称で知られる我が国で最初のビール、
こちらも第一作目から堂々の登場です。

先日訪れた『寅さん記念館』の舞台セットでも、
冷蔵ショーケースに並んでいたのはサッポロ。
そのくるまやにマドンナや大事な人が訪ねてくると、
『おばちゃん、お茶じゃないよビールだよ、ビール』
と直ぐ様笑い声に包まれた団欒へと突入する。。
列車での移動の場面などでも車窓の傍に缶ビール、
サッポロビールは当初からプロダクトプレイスメント、
いわゆる出資と商品宣伝の関係があったようです。

今では様々なビール商品のラインアップにより、
『サッポロラガービール』という名称ですが、
謂わゆる昔からのサッポロビールとはこれ。
近年はラベルのレトロ感からガード下で人気とか。

発売は明治10年、北海道開拓使麦酒醸造が近代国家
の産声と共に作り上げた最も歴史のあるビール。
ホップが自生していた北海道に中川清兵衛が着手、
使団の『北辰旗』のモチーフである『五稜星』
北極星を頼りに北を目指したフロンティア精神の印。
明治天皇にも献上され、大日本麦酒株式会社と
変遷後も全アジア商圏で販売され、青島ビール製造、
この赤い星のマークは良質なビールのシンボルであり、
アジア各国のビール製造の手本となりました。

最近はビールの大瓶を見る機会が少なくなった。
小さめのビアタンに注いで注がれて、
そんなコミュニケーション自体が薄れたのか。
寅さんの宴や屋台でのシーンを観ると、
何だか少し温かい気持ちになる。

前述の『角瓶』同様、サッポロビールも
昔からの日本映画の中によく登場しています。
繁華街のネオンサインや看板、ポスターなどでも
色々と見つける事が出来ます。

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