『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #18「ル・アーブルの靴みがき」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #18「ル・アーブルの靴みがき」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第18回作品『ル・アーブルの靴みがき』
2011年フィンランド仏独
作品の舞台はフランスの北西部にある港町。
行きつけのバーにはノルマンディー地方らしく、
シードルやアメール・ピコン、ワイン、
常連が飲んでいる酒は白く濁っているので、
パスティスかアニゼットの類だろう。
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『カルバドス・ブラー・グランソラージュ』(カルバドス)
少年の密航費を工面しようと奔走する主人公に対し、
しつこく絡んでくるのが強面の警視モネ。
此奴が愛飲しているのが『カルバドス』というお酒。
これはリンゴの蒸留酒で『カルバドス』と呼ばれ、
コニャック、アルマニャックと並ぶ世界3大ブランデーの
一つ、作品の舞台ノルマンディー地方の特産品です。
地元民には『カルヴァ』の愛称で親しまれているそう、
ざっくり言えば、フランスの南側はワイン文化
、北側はシードル(リンゴ酒)文化で、
16世紀半ばには『カルバドス』は誕生、
ノルマンディー地方以外で作られる同様の
蒸留酒はアップル・ブランデーと呼ばれており、
明確に区別されてます。
今回はおそらく最も日本で入手しやすいフラッグシップ、
『カルバドス・ブラー・グランソラージュ』をご紹介。
リンゴの甘く豊潤な香りと口当たりが醍醐味。
同じくこの地方特産品のカマンベールやフォアグラなど
とも相性がよく、シガーがまたいい。
基本的には食後酒として嗜まれ、
また食事中の口直しとして飲む習慣もあります。
作中では質素な生活者である主人公に対して、
年代物のワインやカルバドスを常飲する権力側にある警視モネ。
その対比こそ、このお酒がラストシーンで上手く効いてくるのです。
他の映画では『カサブランカ』『あなただけ今晩は』
『凱旋門』ではイングリット・バーグマンの体を温めます。
私的にはリビングに一本置くにはうってつけのお酒。
ナイトキャップに、料理のフランベに、お菓子つくりや
熱いコーヒーに少し垂らしてみたりと。。
『フィンランディア』(ウォッカ)
今回作品中には登場していませんが、フィンランド人の
アキ・カウリスマキ監督作品という事ですので、
ここはあまり機会のないフィンランドのお酒を。
フィンランド産プレミアムウォッカ『フィンランディア』
欧州で第2位、世界で第5位のプレミアムウォッカブランドとして
世界130ヶ国以上で販売されています。
バーでもカクテルベースとしても頻繁に使われています。
北欧の氷河の中で長い時間をかけて氷堆石によってろ過された
天然氷河水を仕込み水として使用し、白夜の太陽の下で育った
フィンランド産の六条大麦を原料として製造。
他のウォッカではジャガイモや小麦なども使われますが、
これは六条大麦のみで作られています。
氷河をイメージしウォッカの透明感と新鮮さを表現した、
スタイリッシュなボトルは、1970年にフィンランドの彫刻家で
イッタラのデザイナー、タピオ・ヴィルカラがオリジナルデザインを手掛け、
2003年以降はフィンランドのデザイナーハッリ・コスキネンによるもの。
清冽で純度の高い風味が活きるシャープな味わい、
フレーバーウォッカタイプの商品も多数あります。
他の映画では『ロングキスグッドナイト』そして、
『007/ダイアナザーデイ』ではウォッカマティーニが肝である
007シリーズの正規採用ウォッカとして堂々の登場。
カリウスマキ作品の多くはフィンランドが舞台、
ショットグラスに注がれた透明の酒がよく登場しています。
映画を観るとついフィンランドに行ってみたいなと思う。
緯度の高さ、凍てつく寒さ、グレートーンの街の雰囲気に
さぞウォッカはよく似合うのだろう。。