『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #19「ミリオンダラーベイビー」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #19「ミリオンダラーベイビー」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第19回作品『ミリオンダラーベイビー』2004年米国
世界ボクシングとお酒は以外と近くにあって、
大小タイトル戦などのマッチスポンサーに多い。
本作でもドイツの試合で『CLAUST HALEF』
イギリスの試合で『BOLD SPIRIT』など見て取れます。
(どちらも日本未入荷)
お酒のシーンはイーストウッドがベガスで一度のみ、
しかしこれも銘柄は不明、コロナやハイネケン、
会話の中にカクテルのマイタイなどが出てきます。
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。
『ミリオンダラー』(カクテル)
この作品のタイトルを見て、先ずピンときたお酒は
やはりカクテルの『ミリオンダラー』
この歴史あるスタンダードカクテルは日本生まれ。
1889年(明治22年)横浜グランドホテルの総支配人と
して招かれたイギリス人のルイス・エッピンガー氏が考案。
ドライシェリーベースのバンブーも彼の作品です。
菊池寛曰く『酒ならばコクテール、コクテールならば
ミリオンダラー・コクテール、雑誌ならばわが文藝春秋』
考えてみればおよそ130年前の代物、
ジンやパイナップルジュース、グレナデン、ベルモットに卵白、
当時の上流や風流人にとって、
さぞ魅惑的な飲み物であった事でしょう。
1915年にはラッフルズのメニューに、1930年代には
既にイギリスのサボイに登場、戦前ですからね、
当時の日本の国威と共に瞬く間に世界へ
広がったことがうかがえます。
現在はドライジンが使われますが、
今回はオールドトムジンで当時の雰囲気を再現してみました。
横浜グランドホテルは、
1923年の関東大震災で大きな被害を受けたため廃業、
その流れをくむ現在の横浜ニューグランド・ホテルの
Barシーガディアン2で『ミリオン・ダラー』は今日でもなお、
定番の人気カクテルとなっています。
横浜に出かけついでにちょっと足を運んでみては?
そして、長い人生の中でいい事があったその夜に、
オーダーしたいお酒。100万ドルですから。。
『タラモア・デュー』(アイリッシュ・ウィスキー)
今回作品中に登場していませんが、主人公がアイルランド
系移民の貧困層から『モ・クシュラ』の愛称と共に、
成功の道を駆け上がっていくストーリーから
アイルランドのウィスキーをチョイスしました。
アイリッシュウィスキーは初回アンタッチャブルで
『ジェムソン』を紹介。この作品中の主人公の
テーマカラーであり、国のシンボルカラーでもある
『グリーン』のラベルの『タラモア・デュー』を。
アイルランドのお酒はボトルやラベルに緑色を使った
ものが実に多いのです。
ウィスキー作りの歴史は古く、
アイルランドはウィスキー発祥の地と呼ばれています。
言い伝えによれば、中東を訪れたアイルランドの修道僧が、
現地から蒸留技術を持ち帰り、それを酒造に応用したという、
また聖パトリックが蒸留技術を伝えたとする伝承も存在します。
その聖パトリックさんが緑色のシャムロック(国花)の
三枚の葉から国中でキリスト教の三位一体を説いたこと、
また昔より『エメラルドの島』と呼ばれていたこと
などから緑色が国のシンボルカラーになったようです。
味わいはノンピート、三回蒸留で口当たりは柔らかく、
大麦本来の風味を感じ味わうほどに味わい深い。
アイルランドやアイリッシュ系を強調した作品など、
銘柄は様々ですが多くの映画に登場しています。
『静かなる男』『ヒア・マイ・ソング』『波止場』
『ミラーズ・クロッシング』『アンタッチャブル』
『評決』『ブローン・アウェイ・復習の序曲』etc…