『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #33「AKIRA」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #33「AKIRA」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第33回作品『AKIRA』1988年日本
2019年のネオ東京を舞台にし、翌年にオリンピック
開催を控えているという、予言的タイムリーな作品。
今年は様々な場所でアキラの企画展が行われている。
作品中、カプセルドラッグはバンバンキメるものの、
明確なお酒のシーンはなし。
バー春木屋の酒棚に並ぶ銘柄も似せて非なるボトル、
崩れ落ちるビールの大きな電飾看板はラ・メール・
ビール、フレンチも入り何ともバンド・デシネ的。
そこで今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します
『ハイ・ニッカ』(ウィスキー)
覚醒し能力を得た鉄雄。ラボを脱出後に向かった先は
いつもの溜まり場であり、薬の調達先である春木屋。
チームの山形と甲斐が後から店に入ると、無残な姿に
変わった春木屋のオヤジと不敵に笑う鉄雄の姿が。。
鉄雄の”力”により吹っ飛ばされたのだろう、オヤジは
ダンボールの山に押し潰されるように横たわる。
そのダンボールに『ハイ・ニッカ』としかと確認出来る、
そこで現実と同じく2019年の「ハイ・ニッカ」をご紹介。
1964年ニッカウヰスキーより発売。
この年は東京オリンピックの開催であり、これも作品の
舞台設定に符号します。
「ハイ・ニッカ」の「ハイ」はHi-Fidelity。
原音や原画に忠実な再現という意味であり、スコッチの
伝統的な製法を守り、特級ウィスキー製造にこだわった
竹鶴氏の、二級であってもウイスキーの本格的な味わい
をしっかりと表現したいという想いの銘柄であろう。
当時、二級はブレンド用アルコール多く含ませウイスキー
原酒の比率を少なくして販売していたが、竹鶴は酒税法の
限度の最上限までモルトを使用、低価格もあり大ヒット。
晩年の竹鶴政孝が晩酌にこのハイニッカを愛飲して
いたという逸話もある。
1978年酒税法改正から銘柄を増やし、草刈正雄のCMで
一層の人気を博す、バーのバックバーというよりも家庭
の食卓の上で、晩酌ウイスキーとして長く愛されている。
選んだ理由はもう一つ、
「ハイ・ニッカ」の瓶詰めはニッカ柏工場に依るところ。。
『オリンピック』(カクテル)
作品中に於いても、そして現実世界に於いても、
来年の2020年にオリンピックが開催されます。
どちらも新オリンピックスタジアム建設中であり、
劇中では、その地下に隠された軍の極秘施設の中、
AKIRAが絶対零度で静かに冷凍封印されている。
決して目覚めてはいけないものが。。
そこでカクテル「オリンピック」をご紹介。
フランス産まれのカクテル。ホテル・リッツ・パリで、
1900年にパリで開催された第2回オリンピックを記念
して作られた、100年からの歴史を持つスタンダード
カクテルです。
レシピはシンプルにブランデーとオレンジキュラソー、
オレンジジュースを同量シェーカーに入れ、シェークし
たら完成。まるで金メダルのような黄金色。
口の中に広がるブランデーの風味とオレンジの甘みの
バランスが良く、強いが飲みやすいカクテルです。
ブランデーはオレンジとの相性が良く、グランマニエ
やコアントローなど様々なバリエーションのカクテル、
またクレープやデザートなどでどちらも良く使われます。
フランスは朝起きたら新鮮なオレンジジュースが出され、
食後の一服でそのビタミンCを破壊するのが習慣です。
オランジーナなどフランスでオレンジは欠かせない。
さて肝心の東京オリンピックですが、
劇中ではネオ東京の復興のシンボルでありつつも、
急速な発展の裏で貧富の格差、失業、都市型テロ、
人体実験、クーデター、政治の荒廃、ドラッグの蔓延、
新興宗教、レーザー兵器、若者の不良化、etc….
混沌としたカタストロフィーな世界が描かれています。
果たしてオリンピックを控えた現実の東京は如何に。。
<追記 2020年3月>
2020東京オリンピック、来年の延期が決定。