キネマ倶楽部,  音楽・レコード

サスペリアの音楽/ゴブリン

#『サスペリア』7inchアナログ盤のサウンドトラック。

ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)
により増幅され一世を風靡した。

現在では、ホラー映画にロックが流れるのはおかしいことではない。
しかし、ロックの誕生から恐怖演出に応用されるまでには時間がかかった。
1950〜60年代の映画音楽では、まだまだフルオーケストラによる演奏が主流。
ショック、サスペンス演出には、せいぜい現代音楽的な手法を取り入れるにとどまった。

監督のアルジェントは中世の魔術を連想させるような音楽を欲しがり、
実際に古典音楽をいろいろと調査して折、ラテン語の題がついた古いメロディーを見つけた。
その題を訳すと「木の上の3人の魔女」という意味だった。

「魔女」という共通点を持つ発見に驚いたアルジェントとゴブリンはそのメロディーを採用。
タイトル曲の製作に入った。オルゴールのような音色でアレンジを加え、
ブズーキ、タブラなどの民俗楽器、変調させたささやき声などを使った音響処理などで彩っていく。
そして、中間部に爆発するかのようなワンコードの即興パートを加えて完成。
ホラー映画とロックが見事に結びついた瞬間だった。

他にも独創的な工夫が凝らされた。
サンプラーの元祖と呼ばれる電子楽器、メロトロンにチャーチオルガンの音を録音。
教会までいかなくとも、スタジオで自在にチャーチオルガンの音色をコントロールできるようにした。
この音はタイトル曲の即興パートや、数々のショックシーンで効果的に使用されている。
また、手弾きのアレンジではなく、コンピュータ制御によるシンセサイザーとの同期演奏も披露。
ティンパニの連打にディレイをかけてうめき声をかぶせるといった、
悪趣味なアレンジもここでは功を奏している。
アルジェントの原色を多用する異様な色彩感覚と、中世から残る魔女、
魔術というコンセプトと一体になったゴブリンの音楽は観客の耳に大きなトラウマを残した。

「サスペリア」は世界各国で大ヒット。
1970年代のホラー映画を語るときは、避けて通れない作品となった。
サントラLPはイタリアに次いで日本でも好セールスを記録。

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