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『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #56「三つ数えろ」

『シネマに酔狂』

バーテンダーが語る映画とお酒 #56『三つ数えろ

〜映画を彩る名脇役たち〜

Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。

第56回作品『三つ数えろ1946年米国

レイモンド・チャンドラー原作のノアール物とあって、
様々な場面でお酒が登場し、大抵マーロウは飲んでいる。
冒頭では依頼主である将軍の汗ばむ温室にてブランデーを。
(もはや飲めぬ体の将軍はシャンパン割りをよく飲んだと話す)
ビビアンの部屋には多くのボトル、エディー・マースの執務室、
共に置かれているクリスタルデキャンタはコニャックか。
ガイガーの店の向かいの書店では眼鏡の娘とウィスキー、
一件落着に見えた中盤に、バーで乾杯するのはスコッチ水割り、
いずれも銘柄不明、セリフにも扱われていない。。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します。

『ボガーツ・リアル ・イングリッシュ・ジン』(ジン)

酒のシーンは多くも銘柄には触れられていないと言う事で、
本作主演のハンフリー・ボガートの名を冠したジン、
ボガーツ・リアル ・イングリッシュ・ジン』をご紹介。

1940~50年代を代表する名優であるハンフリーボガート。

ROKドリンクス社とハンフリーボガート財団がコラボレートし、
彼をイメージしたジンを2014年に誕生させました。
ボガートは「ドランブイ」が好きな事で知られていますが、
彼の息子であるステファン・ボガートは、
(4人目の妻ローレン・バコールの間にできた息子)
『彼はジンを愛していた』と述べています。

ジンはオランダで発明され、イギリスで完成されました。
ボガートも同じくオランダとイギリスの血を引いています。

蒸留には銅のポットスチルで2回蒸留を行い、
スムースかつ雑味の無い口当たりに仕上げています。
一回目の蒸留の後ジュニパーベリー、5種類のコリアンダー、
砕いたマカダミアナッツ、新鮮なシトラスの皮を浸漬し、
2回目の蒸留を行っています。

ダンディズムな雰囲気のラベルが何とも良い。。。

現行品でも手に入りますが、残念ながら黒いラベルにロゴのみ。
このボギーのポートレイトラベルは初期ロットのみですので、
どこかで見かけたらファンは是非!

『ジム・ビーム・ライ』(ライウィスキー)

事件の最初の手がかりとなるガイガーからのブラックメール。
所在地の古書店に本のバイヤーのふりをして立ち入るマーロウ、
だが女店員の振舞いや、希少本への応対など何だか怪しい。。
丁度向かいに別の古書店がありそこで本星のガイガーを待つ。

眼鏡の若い娘(ロリータ風)の店員からあれこれとガイガーの
情報を聞き出しつつ、マーロウは懐からスキットルボトルを出し、
これでもやりながらと言うと娘は店のウォータサーバー用だろう
紙コップを用意し、二人で暫し時を過ごすことに。。

この時、マーロウはその酒を「Pretty good rye」と言っている。

ライ・ウィスキーであるが銘柄は不明、普段マーロウが持ち歩く
スキットルなら高級品よりは一般的な普及品の方が似つかわしい、
と言う事で『ジム・ビーム・ライ』をチョイスしました。

これは禁酒法以前のスタイルのライウイスキーを踏襲する形で復活。
ライ麦の生産量が減少の中でライウイスキーも稀少となっているが、
ジム・ビームは1945年の夏より販売し続けるロングセラー。

その後、大人の世界やミステリーまがいの人間模様に興味津々の娘に
やや誘惑されつつも、マーロウはクールに事案捜索へと戻っていく。。

ハードボイルドには、ライウィスキーがよく似合う。

ライ麦が主原料ゆえにバーボンと比べるとドライで辛口な味わい、
安価で手に入る、そんな野郎っぽい印象がマッチするのか、
別の作品でマーロウは、ブラックコーヒーにライウィスキーを
垂らして飲むスタイルを披露している。

ライに限らずもチャンドラー作品ではウィスキーがしばしば、
「かわいい女」ではオールド・フォレスター、「長いお別れ」では
オールド・グランダッド、その他カナディアンクラブなど。

そう、「ギムレット」の話は長くなるのでまたの機会に。

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