
『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #36「カジノ」
『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #36「カジノ」
〜映画を彩る名脇役たち〜
Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。
第36回作品『カジノ』1995年米国
監督マーティン・スコセッシ、主演ロバート・デ・ニーロ。
ある天才賭博師を通じて、まだマフィアの支配下にあった
1970年代から80年代のラスベガスを描く。
作品中ではカンザスシティの大御所達の飲むワイン、
祝い事でのシャンパン、アル中のジンジャーは
(シャロンストーン)頻繁にストレートの酒を飲む。
しかしいずれも銘柄は不明となりまして、、
成功したエースのリビングには高価なクリスタルデキャンタ
に入った酒、それをコーラで割って飲むシーンも良い。
そこで、今回も私の独断と偏見でお酒を紹介します
『カジノ』(カクテル)
その名の通り作品タイトルからカクテル「カジノ」
スタンダードカクテルで「ネバタ」というのもあり
どちらか考えましたがタイトルの「カジノ」をチョイス。
ジンベースで飲んだ瞬間、口の中に広がるマラスキーノ
リキュールの香りがこのカクテルの魅力。
マラスキーノはさくらんぼから作られたリキュールで、
そのお酒に浸けたレッドチェリーが飾られています。
さくらんぼのお酒は他にもキルシュワッサー、
チェリーブランデーなどありカクテルに使用します。
作品では冒頭のシーケンスからカジノでのシーン、
ポスターや予告編などで、透き通った赤いダイスが頻繁に
登場しています。
赤いダイス、一体何を象徴しているのでしょうか?
彼らの野心か、流れる血の色か、愛憎や欲望か。。。
このカクテルのレッドチェリーと作品の赤いダイスが
何かイメージを繋ぎ合わせるようで。
もしあれば赤いダイスをグラスに沈めたかったところ。。
もう一つ、カジノといえばスロットマシンですが、
そのロールの柄の一つに可愛いレッドチェリーが。。
これもまたカジノのイメージとマッチします。
作品の最後に生き残ったエース(デ・ニーロ)は語ります。
夢のようないい時代は去り、今やカジノは大手企業の
ようなシステムで運営され、ビジネスやディーラーの
学校を出たような連中がフロントに構える。
大きな野心を賭けられるカオスが無くなってきている、
それはカジノに限らず様々なところで。。
『マティーニ』(カクテル)
言わずと知れたカクテルの王様「マティーニ」
エース(デ・ニーロ)とジンジャー(シャロン・ストーン)
が会って間もない頃、カジノのラウンジで談笑しつつ
お互いが熱く惹かれ合っていくシーン。
ここでジンジャーの片手にはマティーニがあり、楽しそうな
雰囲気の中で強い酒をサッとを飲み干している。
そしてエースからお金を預かり用を済ますが、かなり多めと
思われるそれをすっかり使って戻ってくる。
このシーンはその後のジンジャーが重いアルコール中毒や
薬物依存となっていく事、エースを裏切ってお金や宝石への
執着がエスカレートしていく事が既に暗示されている。
そこでのお酒が「マティーニ」というのが良いもので、
その後はアルコール依存が進み、ただグラスに注いだ
ストレートの酒を煽っているばかりとなり。
マティーニやシャンパンの華やかさはとうに失われて、
効率よく体にアルコールを入れる野蛮な飲み方となる。
美しい妻シャロン・ストーンが酒やドラッグで醜くなって
いくコントラストとダブって見えてくる。
ジンとドライベルモットの極シンプルな酒。
カクテルの王様「マティーニ」は多くの映画や小説に
登場し、多くの著名人に愛されたカクテルで、それを
挙げたらいとまがないほどに。。
007シリーズやワイルダー作品、ハードボイルド系、
チャーチル、ヘミングウェイ、クラーク・ゲーブル…….
マティーニの話は、また別の作品にてゆっくりと。。

