映画とお酒

『シネマに酔狂』バーテンダーが語る映画とお酒 #5「パルプフィクション」

『シネマに酔狂』
バーテンダーが語る映画とお酒 #5「パルプフィクション」

〜映画を彩る名脇役たち〜

Bambooキネマ倶楽部の作品に合わせてご紹介した、
映画とお酒にまつわるコラムです。

第五回『Pulp Fiction/パルプフィクション』1994年米

今回の作品中、バニラコーク、ミルクセーキ、スプライト、
美味そうなコーヒー、などソフトドリンクな世界で
お酒のシーンはほとんど無し。(ヴィンセントのウィスキーくらい)
しかしノンアルコールでここまでバイオレンスなのが、
かえって深刻な恐怖、ってもの。
そこで、また違った視点から独断と偏見でお酒を紹介します。

『デュワーズ・ホワイトラベル』(ブレンデッドスコッチウィスキー)

先ずは作品唯一、ヴィンセントがミニバーでウィスキーを飲んでミアを待つシーン。
ウィスキーのラベルのアップ写真には『McCLEARY』Blended Scotchとありますが、
実はこんなスコッチ、この世には全く存在しません。
これはこのシーンの為に用意した架空のお酒、小道具です。

そこには映画ならではの理由があります。
映画には『プロダクト・プレースメント』という一種の広告、
それによる資金集めのシステムがあります。以下『P.P』
タランティーノはアンチP.Pなのでしょう、作中のお酒に限らず、
商品などの多くは裏向きに置かれています。
この作品でもバーや台所など、ほぼそうなっています。
逆に敢えてクローズアップで映るお酒やタバコなどは、
タランティーノが作った架空の商品が多いのです。
他にその商品の持つ特定のイメージを画面に付け加えたくない、
といった理由もあるのでしょう。
(架空商品の名前やデザインなどに別の意味があるのかも。)

人は無意識にラベルを正面に置きますので少し不自然なのですが、
バーテンダーの私はお客様にラベルの正面を向けてお酒を置くので、
普段、常にボトルを裏側ばかり見ているのです。
なので、作中で違う見方、違う気付きがあったりするのです。

ところで、架空のウィスキーではどうにも歯が立ちません。
そこで、白いラベルの代表的なブレンデッドスコッチ、
アメリカのマーケットでの浸透性、製造会社のロゴ、など総合して、
『デュワーズ・ホワイトラベル』をセレクトしました。

高級なスコッチはきっとタランティーノらしくない。
ブレンデッドの優等生、ハイボールでデュワーズを指定する方も多いですが、
ここはビンセント流にストレートがクール!

『カルーア・コーヒーリキュール』(リキュール)

作中に『5ドルのミルクセーキバーボン入り』という
セリフが出てきますが、作ったところできっと誰も飲まないな。
と思っていたら、バーテンダーは見つけてしまいました。

ヴィンセントとジュールスが踏み込んだアパートの台所、
当然後ろ向きに置かれた数本のボトルの中、カルーアのボトルがありました。
カルーアのボトルは独特の特徴があるのですぐ。
そしてスプライトでハンバーガーを食べてるような、
若いチンピラの部屋にあってきっと不自然ではないお酒だろう。

美味そうなコーヒー、ミルクセーキと出てきたので、
ここはカルーアミルクが良いでしょう。
アラビカ種のみコーヒー豆を使ったメキシコ産の老舗コーヒーリキュール。
世界的にもカルーアと言えばコーヒーリキュールの代名詞、
様々なカクテルにも使われます☆

甘いお酒はちょっと、という方もたまに飲むと美味しいです。
お酒の強い方はウォッカのロックに加えればブラックルシアン、
ブランデーのロックに加えればダーティーマザー、オーガズムなんてのも、
おやおや、ネーミングがタランティーノ的じゃないか。

<追記>
『プロダクト・プレースメント』の始まりはジェームス・ディーンが
ポケットから取り出した髪を整える櫛に問い合わせが殺到し、
これは広告に使えるんじゃないか、というのがきっかけのようで。
有名なのは007シリーズの車や時計、バックトゥのペプシなど。

物の置かれ方が裏向きだったり、表向きだったり、
現実にあるものだったり、架空のものだったり。
色々と興味深いものです☆

裏向きは少し不自然ですが、表を向きすぎてもまた不自然。
役者がビールのラベルを観客が良く見えるように飲んでいる、

これでは飲んでる本人が、敢えてボトルの裏側を正面に据えてるのだから。。

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